string　データタイプ

stringは、新しいデータタイプで文字列を表します。文字列の長さを、シミュレーション中ダイナミックに変化させることができます。

stringは、変数を定義するときの"型"になります.。詳しく見る前に、文字列定数について見ていきます。

ストリングリテラル（文字列定数）

クオート""　で挟まれた文字列を指します。

１）クオート""中のバックスラッシュ改行は、改行が無視されます

module string_literal_test;
 
 
         initial begin
		$display("今日は天気がよいので\
外で泳ぎましょう。");
		$display("今日は天気がよいので\n\
外で泳ぎましょう。");
 
	end
  
endmodule

実行結果です。最初の$displayでは、バックスラッシュ＋改行になっており、ソースコードのディスプレイ上では、改行されますが、実行表示としては、
無視されます。実行上で改行させたいときは、\nと書きます。

***** Veritak SV Engine Version 0.423 Build Jul.7.2011 *****

今日は天気がよいので外で泳ぎましょう。
今日は天気がよいので
外で泳ぎましょう。

---------- シミュレーションを終了します。time=0ns

2)　8ビットASCII文字単位で、変数に代入することが出来ます。

module string_literal_test;
 
	byte c = "A"; // assigns to c "A"
	integer c1 = "A";
 
	bit [5:0][7:0] d="ABCD";
	logic [2:0][7:0] e="ABCDE";
 
 
         initial begin
		$display("c=%s",c);
		$display("c=%s",c1);
		$display("d=%s %x",d,d);
		$display("e=%s %x",e,e);
	end
 
 
 
endmodule

結果です。

***** Veritak SV Engine Version 0.423 Build Jul.7.2011 *****

c=A
c=   A
d=  ABCD 000041424344
e=CDE 434445

---------- シミュレーションを終了します。time=0ns

変数への代入は、右詰され、左側は、ゼロPAD、もしくは切捨てられます。

module string_test;
	logic [8*14:1] stringvar;
 
         initial begin
		stringvar = "Hello world";
		$display("%s is stored as %h", stringvar, stringvar);
		stringvar = {stringvar,"!!!"};
		$display("%s is stored as %h", stringvar, stringvar);
        
         end
endmodule

***** Veritak SV Engine Version 0.423 Build Jul.7.2011 *****

   Hello world is stored as 00000048656c6c6f20776f726c64
Hello world!!! is stored as 48656c6c6f20776f726c64212121

---------- シミュレーションを終了します。time=0ns

３）ストリングリテラルの連接についての注意点

これは、ゼロパッドしているが故です。bit 幅は、コンパイル時に決定され固定していることに起因する問題です。このような場合は、string変数を使うとよいでしょう。

4)ストリングリテラルの16進直接指定

バックスラッシュｘYY　（YYは、16進二桁）で直接ASCIIコードを指定できます

string タイプ

１）stringは、regと違い、ゼロパッドされることはないので、直感的に自然な結果になります

***** Veritak SV Engine Version 0.423 Build Jul.7.2011 *****

strings are equal Hello world!

---------- シミュレーションを終了します。time=0ns

２）string 代入前初期値は、""空(長さ０の）のストリング,0の書き込みは、常に無視されます。

言語の内部実装には、Cのchar* になっていると思います。（DPIでのインターフェース仕様からの類推）　しかし、Cのポインタの生存管理は、言語内でクローズしており,ユーザは意識する必要はありません。

３） string以外の変数->string変換では、キャストが必要です

　　ストリングリテラル -> string キャスト不要
　　string 　　　　　　　 ->　string キャスト不要

　　を除いて、キャストが必要となります。ストリングへのキャストは、string'( )　です。
　　
　　ストリングへのキャスト操作は、次のようになります。
　

３） stringに関するオペレータ

使用可能なオペレータは、それほど多くありません。以下に限定されます。

のように、変数repeatが可能になります。これに対して、regに代入する場合は、コンパイル時にビット幅が確定しないので、コンパイルエラーとなります。

***** Veritak SV Engine Version 0.423 Build Jul.7.2011 *****

b=HH
a=HHH
{i{b}}=HHHHHH
a=HHHHHHHH
a=ABCHH
r=00004800
b=H
a=iBCHH
a=HBCHH
a=HBCHH

---------- シミュレーションを終了します。time=0ns

オペレータ	意味
Str1 == Str2	二つのstringが一致するなら１、一致しないなら0を返します。オペランドのどちらかがストリング変数ならば、比較は、ストリングタイプとして、行われます。どちらもストリングリテラルであるなら、reg variable変数同士の比較と同じように行われます。
Str1 != Str2	不一致のときに１、一致のとき０が返ります。
Str1 < Str2 Str1 <= Str2 Str1 > Str2 Str1 >= Str2	c言語のstrcmpに同じです。条件が成立して==のときは、0が返ります。==でない条件成立のときは、正数が返ります。不成立のときは、負数が返ります。　正数、負数は、かならずしも+1、-1ではありません。
{Str1,Str2,...,Strn}	オペランドのどれかひとつでも、stringタイプなら　stringに変換されて演算が行われます。
{multiplier{Str}}	multiplierが定数でないか、Strがstringタイプであるときは、stringに変換されて演算が行われます。
Str[index]	string は、内部的にインデクスが振られ0からNが振られています。（Nは、Str.len()-1） str[0]は、最初の文字、　str[N]は最後の文字になります。
Str.method(...)	string　メンバー関数です。

メソッド	意味
function int len();	長さを返します。stringが空(="")のときは、0が返ります。
function void putc(int i, byte c);	str[i]=c;を実行します。 i < 0 または、 i >= str.len()のときは、strは、書き込まれません。. また、c==0のときも、書き込まれません。
function byte getc(int i);	str[i] を返します。 i < 0 または、 i >= str.len(),のときは、 0が返ります。
function string toupper();	大文字に変換します。
function string tolower();	小文字に変換します。
function int compare(string s);	C言語のstrcmpに同じです。
function int icompare(string s);	大文字、小文字を無視したcompareです。
function string substr(int i, int j);	str.substr(i, j) は、str[i:j]を返します。 i < 0, j < i, or j >= str.len(), のときは、""空stringが返ります。
function integer atoi(); function integer atohex(); function integer atooct(); function integer atobin();	atoi:ASCIIデシマルストリングをintegerl型に変換した結果を返します。 atohex:ASCIIHexストリングをintegerl型に変換した結果を返します。 atooct:ASCIIHexストリングをintegerl型に変換した結果を返します。 atobin:ASCIIBinaryストリングをintegerl型に変換した結果を返します。これらの関数は、32ビットで打ち切りになります。32ビットより大きいときは、$sscanfを使ってください。
function real atoreal();	ASCIIデシマルストリングをreal型に変換した結果を返します。
function void itoa(integer i);	integer型iをDecimalストリング(0-9)に変換します。
function void hextoa(integer i);	integer型iをHexストリング(0-ｆ)に変換します。
function void octtoa(integer i);	integer型iをOctalストリング(0-7)に変換します。
function void bintoa(integer i);	integer型iを0/1ストリングに変換します。
function void realtoa(real r);	real型rをストリングに変換します。

システムタスク名	task/function	意味
$swrite(output_str, list_of_arguments ); $swriteb(output_str, list_of_arguments ); $swriteo(output_str, list_of_arguments ); $swriteh(output_str, list_of_arguments );	task	output_strに指定フォーマットで読み取ります。フォーマット指定は、どこにあってもよいのですが、"%d %s"等の定数フォーマットでなければなりません。
$sformat ( output_str , format_string , list_of_arguments ) ;	task	output_strにformat_string(2ndパラメータに限定されます。）で指定されるフォーマットで書き込みます。format_strは、"%d %s"等の定数に限定されず、stringも使用することが出来ます。
$sformatf ( format_string , list_of_arguments ) ;	function	$sformatのfunction版で戻り値がstring になります。 $psprintfは、LRM(P1800-2009)では定義されておらずvendor uniqueです。$sformatfを使ってください。
$sscanf ( str , format , args )	function	format指定で、strをスキャンします。読み込みに成功した個数が戻り値として返ります。